Free【猿楽の旅音日記】⑥組曲天台寺 壱ノ章~阿吽~

天台寺の仁王門から奥の本堂へと続く参道(楽曲のMVより)
天台寺の仁王門から奥の本堂へと続く参道(楽曲のMVより)

今回から、全5章で構成する組曲「天台寺」を、1章ずつ紹介する。僕が二戸に移住した2020年は、浄法寺地区の宝であるこの寺が、約360年ぶりの大修理を終えた年だった。初めて訪れた時、この土地に長く根付く、文化の薫りをしっかりと感じた。

 今の寺の姿しか知らない僕には信じられないが、一時期はかなり寂れてしまっていたらしい。建立当初のきれいな状態に復元された寺には、多くの人に足を運んでもらいたいと思う。

 組曲は、「阿吽(あうん)」「空蟬(うつせみ)」「寂庵(じゃくあん)」「護摩(ごま)」「天台」の5章からなる。全体を一つの楽曲として演奏することで、長い歴史を誇るこの寺の多彩な魅力を表現してみた。

 まず壱ノ章の阿吽について、どんな情景をモチーフに作った曲なのかを紹介する。寺の参道の長い階段を上ると、仁王門が見えてくる。そこに立つ仁王さんの像が、阿形と吽形である。

 仁王門をくぐる時に、煩悩にまみれた弱い自分自身も、一喝されてしまうだろうか。そんなことを想像しながら、石燈籠(いしどうろう)の間を通って、本堂へと続く道をさらに上っていく。

 そして、頭の中で空想の世界が広がっていく。辺りはいつの間にか暗くなり、かがり火がたかれ、道が照らされている。煩悩を断ち切って進むと、次々に神仏が現れ、味方をしてくれる。そんな場面を思い浮かべながら、荘厳なイメージで曲を仕上げた。(猿楽)

【天台寺】奈良時代の728年創建。2020年3月、国指定重要文化財の本堂と仁王門の大修理が完了した。名誉住職の故瀬戸内寂聴さんが京都から株分けして増やしたアジサイが、毎年7月に見頃を迎える。

 ※タイトル曲などのミュージックビデオ(MV)は、猿楽さんのサイト「にのへの旅音」で順次公開する。

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